
工事進行基準
Q6 H20年で改正された「工事進行基準」について教えてください。
ポイント
- 税法における変更のポイント
①工事進行基準の適用は、工期1年以上かつ請負対価が10億円以上で強制適用となります。(従来の取扱:工期2年以上かつ請負対価が50億円以上)
②損失が生ずると見込まれる場合でも工事進行基準の適用が認められるようになりました。(従来の取扱:工事の請負に損失が生ずると見込まれるに至った場合には、その事由が生じた日の属する年において、工事進行基準の適用が出来ないこととされていました。)
③工事進行基準の適用対象に、ソフトウェアの受注制作が加えられました。 - 会計における変更のポイント
成果の確実性(工事収益総額・工事原価総額・工事進捗度の適切な見積)が認められる場合に適用となります。 - 税法と会計の違いとは
会計基準における成果の確実性が求められない場合に該当する内部管理体制であったとしても、
税務における工期1年以上かつ請負対価が10億円以上の工事については、強制適用となります。
解 説
1.会計処理
《例題1…利益が見込まれる例》
受注制作のソフトウェア。請負総額は100百万円。開発期間は2年半。契約時の開発原価見積総額は60百万円。
受注制作のソフトウェア。請負総額は100百万円。開発期間は2年半。契約時の開発原価見積総額は60百万円。
| X1年 | X2年 | X3年 |
合計(百万円) | |
人件費 |
10 | 10 | 5 | 25 |
| 外注費 | 5 | 20 | 10 | 35 |
| 合 計 | 15 | 30 | 15 | 60 |
| 工事進行基準 | 工事完成基準 | ||||||||||||||||||||||
| X1年 ①原価の支払時
②決算時、収益計上
=25% 売上高=100(請負総額)×25%=25百万円 ③決算時、売上原価への振替
|
X1年 ①原価の支払時
②決算時、収益計上はなし ③決算時、仕掛品への振替
|
||||||||||||||||||||||
②決算時、収益計上
)=75% 売上高=100(請負総額)×75%-25(X1年計上分)=50百万円 ③決算時、売上原価への振替
|
②決算時、収益計上はなし。
③決算時、仕掛品への振替
|
||||||||||||||||||||||
X3年 ①原価の支払時
=25百万円 ③決算時、売上原価への振替
|
X3年 ①原価の支払時
②決算時、収益計上
③決算時、売上原価への振替
|
《例題2…中途より損失が見込まれる例》
受注制作のソフトウェア。請負総額は100百万円。開発期間は2年半。契約時の開発原価見積総額は60百万円。しかし、X2年の中途において、原価見積総額が110百万円に増加、損失が見込まれる。
| X1年 | X2年 | X3年 |
合計(百万円) | |
人件費 |
10 | 20 | 15 | 45 |
| 外注費 | 5 | 42 | 18 | 65 |
| 合 計 | 15 | 62 | 33 | 110 |
| 工事進行基準 | 工事完成基準 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
| X1年 《例題1》と同様 |
X1年 《例題1》と同様 |
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②決算時、収益計上
=70% 売上高=100(請負総額)×70%-25(X1年計上分) =45百万円 ③決算時、売上原価への振替
④損失引当金を計上
-X1年計上利益 10百万円 (=25-15) -X2年計上利益 △17百万円 (=45-62) 損失引当金繰入額 △3百万円 ※X1年において計上した収益、費用の額の修正は行いません。 ※損失引当金は、税法上は損金に算入されません。 |
②決算時、収益計上はなし。
③決算時、仕掛品への振替
④-1損失引当金を計上
④-2損失引当金を計上
※B/S上の仕掛品を直接圧縮 |
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X3年 ①原価の支払時
=25百万円 ③決算時、売上原価への振替
売上高=100(請負総額)-70(X1、2年計上分) =30百万円 ③決算時、売上原価への振替
④損失引当金の取崩
|
X3年 ①原価の支払時
②決算時、収益計上
③決算時、売上原価への振替
④-1損失引当金の取崩
④-2損失引当金の取崩
|
2.消費税法の取扱(消費税基本通達9-1-5、9-4-1)
原則は引き渡し時に認識します。ただし、法人税法上、工事進行基準を適用している場合には、収益の計上に合わせて認識することも認められています。
3.実務上の疑問点
会計監査法人ではない企業において、工事進行基準を適用した場合、進捗率の計算により。売上高の計上額が決定するため、その進捗率の計算(原価総額の見積計算)において恣意性の介入する可能性が指摘できます。
4.工事進行基準導入による影響
受注側
①売上を早期に計上することとなるため、完成引き渡し時に入金となる契約の場合には、法人税等の納税によるキャッシュアウトが 先行す態るため、資金繰りに注意が必要です。ただし、前受金を収受できる契約形であれば、資金繰りの問題もクリアできます。
②長期の受注制作期間においても、安定した経営成績が示せるため、外部利害関係者に対して、 安定した情報が提供出来、また資金調達においてプラスとなる可能性があります。
発注側
①請負契約での支払サイトが従来より短くなることが考えられ、資金調達に注意が必要です。
②特に金融機関は、建物完成前での資金融資には限度があるため、より慎重な計画策定が必要となると考えられます。
5.導入時の準備事項
①内部管理体制の構築発生原価と原価見積総額との差額の検証が、常に可能となる管理体制が必要です。
6.決算時処理
①完成工事未収入金…貸倒引当金の対象債権に追加されました。
②注記事項…工事進行基準か工事完成基準か、適用の記載が必要となります。
7.適用開始年度
①税法…法人はH20.4.1以後開始事業年度(個人はH21.1.1以後)から着手した工事について適用されます。
②会計基準…平成21年4月1日以後開始事業年度から適用されます。(早期適用も可です。その際には、当該事業年度の期首より適用し、期中からは認められないため留意して下さい。)

